2024.12.17
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メキシコ特有の通関事情とメキシコの物流サービス
ラテンアメリカでブラジルに次ぐ経済規模を誇るメキシコでは、地理的な優位性とUSMCA(旧NAFTA)による貿易利便性から自動車部品メーカーをはじめとするさまざまな企業が製造拠点を構えています。しかし、製造のために必要な原料や部品、また、製造した製品の輸出入には通関手続きが必要で、複雑な通関制度を有するメキシコにおいては、その制度がネックとなり、輸送の遅延や追加費用の支払いなどのトラブルを引き起こすことがあります。そこで、今回はメキシコ特有の通関事情と物流の現状について詳しくご紹介します。
メキシコを取り巻く環境
世界最大の消費地であるアメリカに隣接するメキシコでは、多くの企業が製造拠点を構えています。メキシコは50カ国以上の国と自由貿易協定(FTA)を結び、世界各国と活発な貿易取引を行っています。また、比較的安価な賃金と豊富な労働人口も相まって多くの多国籍企業がメキシコに進出しています。
一方で、メキシコの物流にはいくつか特有の課題もあります。特に、通関制度が複雑で適切な管理が求められることが多いため、進出企業にとっては円滑な物流手配が重要です。
メキシコ特有の通関事情
メキシコにおける通関手続きでは、日本や他国と比べても独自の特徴があります。
① 通関士制度
他国と比べて最も特徴的と言えるのが、メキシコの通関士制度です。通関士資格は生来のメキシコ人(帰化したメキシコ人は不可)のみが取得できる資格で、かつては世襲制で授与数も限られていました。2013年に税関法が改定され、資格取得の規制は緩和されましたが、通関士資格の世襲制は依然として慣習化しており、外資の物流業者が通関ライセンスを取得し自社通関を行うことは事実上不可能です。
また、通関士を介さずに、社内通関法的代表者を登録することで企業が自社で輸出入通関を行うことも法律では認められていますが、同制度利用よりも通関士を介しての通関手続きの方が現在でも一般的です。
② プレビオ制度
メキシコでの通関手続きでは、基本的に「プレビオ」と呼ばれる通関業者による自主的な貨物検査が行われます。税関法にて貨物と申告内容の一致が義務付けられており、メキシコ税関では書類と実際の貨物の不一致が見つかった場合の処罰が厳格です。輸入者もしくは通関業者、または双方へ高額なペナルティ(罰金)が課せられることや、場合によっては輸入者免許や通関士資格の停止もしくは剝奪されることもあります。
メキシコでは、輸入者と通関業者が申告内容に同等の責任・義務を負うとされており、前述の通り輸入者だけでなく通関業者に対しても厳しい処罰が下されます。そのため通関業者は自主防衛手段として、通関前に港にて貨物を開梱し書類の内容と貨物の一致を確認します。開梱検査により貨物へのダメージが生じることや、貨物数が多いと通関までに要する期間が長くなり配送までのリードタイムが長期化してしまうこともあります。プレビオは回避可能ではありますが、一般的な通関プロセスでは実施されるのが通例です。
③ 車上通関、信号検査制度
メキシコの通関は車上通関となっており、貨物が税関のゲートを退場するタイミングで通関プロセスにおける申告許可(通関完了)の確認が取られます。通関業者は納税手続きを完了させたのち貨物搬出をターミナルへ手配、ターミナルより確定された貨物搬出日程に合わせてトレーラーが税関へ入場、貨物をピックアップし信号検査へと向かいます。赤/青信号がランダムに点灯される信号ゲートを通過し、青信号となれば通関完了となり貨物は港より退場します。赤信号が点灯した場合は、税関職員による書類チェックやコンテナ/貨物の開梱検査など、税関より指示される検査プロセスを経て税関より承認が下りた後、申告許可となり港より退場可能となります。
税関検査にあたってしまった場合、港や税関の混雑状況にもよりますが、貨物搬出となるまでに何時間も要することもあるため、輸送上のリードタイムの長期化に繋がったり、税関検査時の荷役費用やトレーラー待機費用など追加の費用が発生したりすることもあります。
鈴与のメキシコ物流サービスとそのメリット
① 輸出入通関に対応
鈴与では地域の協力会社を活用し輸出入通関業務にも対応しています。前述の通り、外資の物流業者が通関ライセンスを取得し自社通関を行うことは事実上不可能ですが、メキシコの協力会社を活用することで物流サービスのみならず、通関サービスの提供も可能です。メキシコの通関制度では1ライセンス(通関士1名)につき対応できる税関が4カ所に限られていますが、複数の通関業者と協力することで主要地域含め幅広い地域の税関での通関対応を実現しています。
② ワンストップサービスの提供
通関事業だけでなく輸送や倉庫保管、配送など物流全体を包括的にサポートするワンストップサービスを提供しています。通常は事前申告や通関に時間が割かれ、配送までのリードタイムが長期化することがしばしばありますが、ワンストップサービスの提供により輸出入通関前後の配送業者との連携が不要になるため、貨物の搬送に係るリードタイムの削減にも貢献します。
また、一貫してご依頼いただくことで事前に貨物の情報を取得できるため、関係各所と情報を共有しスムーズな手配が可能となります。実際に、多くのお客さまに輸出入通関から配送までのワンストップサービスをご利用いただいています。
まとめ
メキシコの通関制度は独特であり、進出企業さまにとっては一見複雑に思えるかもしれません。しかし、鈴与ではメキシコ特有の通関手続きや現地の物流事情、関係法令に精通したスタッフが、通関から輸送まで一貫したサポートを提供しています。これにより、お客さまは手間のかかる通関業務をスムーズに進め、物流の最適化を実現することができます。
メキシコでの輸出入に不安を抱えている方や、物流サービスにご興味のある方は、ぜひ鈴与までお問い合わせください。
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