2025.10.30

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再使用可能医療機器の滅菌プロセスとは? 洗浄から保管までの安全管理

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「再使用可能医療機器(Reusable Medical Device:RMD)」は、医療機関で使用された後に、医療機関の中央材料部(Central Sterile Supply Department:CSSD)により洗浄・滅菌の再生処理が可能な医療機器を指します。私たちが疾病などで医療サービスを受ける際、ほとんどの医療器具は滅菌されて再使用されています。そして滅菌する前には必ず洗浄しなくてはなりません。今回は、医療機関におけるRMDの滅菌に関わる一連の流れについて説明します。

なぜ、滅菌する前に洗浄が必要なのか?

滅菌とは、すべての微生物を殺滅または除去し、微生物が対象物に存在する確率を100万の1以下にすることを指します。この基準を無菌性保証水準*1(SAL≦10-6)と定義し、医療機器製造業・医療機関のいずれにおいても同等の水準が求められます。
*1 Sterility Assurance Level(無菌性保証水準SAL≦10-6

微生物の死滅曲線 (2).png この滅菌保証水準を担保するために、対象物の洗浄が必須です。図1のように初発菌数が100万個(106個)であると仮定するならば、0.000001個(10-6個)までに要する時間は121℃で12分かかることになります。この初発菌数が少ないほど滅菌時間は短縮され滅菌効果も高まります。

洗浄については以下のコラムでも詳しくご説明しています。
▶コラム:再使用可能医療機器の洗浄できていますか?洗浄方法と確実な評価指標とは

医療機関の滅菌方法

医療機関のCSSDではRMDの再生処理を日々行っています。(図2参照)そのプロセスの中に、「滅菌」が含まれています。
RMD再生処理プロセス (3).pngCSSDによるRMDの滅菌方法は、蒸気滅菌法低温滅菌法の2つに分類されます。
蒸気滅菌法は蒸気で微生物を殺滅させる方法です。多くの医療施設に導入されており、幅広い医療機器類の滅菌に対応しています。また、滅菌剤が水であることから対象物・環境・人に影響が無い上、サイクルコストが安価です。
一方、低温滅菌法はEOG(エチレンオキサイドガス)滅菌、過酸化水素ガスプラズマ滅菌、過酸化水素ガス滅菌、LTSF(低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌)とさまざまな種類があります。低温滅菌法は長所・短所があり、主たる滅菌方法ではありません。蒸気滅菌ができない対象物についてのみ低温滅菌法で滅菌します。例えば高温に耐性がない医療機器、短時間で滅菌したい医療機器の場合に選択されます。ただし、短時間で滅菌処理が可能なのは過酸化水素ガスプラズマ滅菌に限られます。
上記を踏まえて医療機関では医療機器に合わせた滅菌法を使い分けています。

滅菌状態を維持する包装や保管

滅菌状態は滅菌が達成された状態を指します。滅菌保証を担保するために、医療機関では適切に洗浄を行った後で全数目視検査を施し、さらに動作確認をします。可動部などには専用油の注油や、剪刀(はさみ)などは切れ味の確認もしています。そのような検査工程を経て、滅菌包装工程に進行します。包装材も滅菌方法により制限があります。不織布(ラップ材)や滅菌コンテナはすべての滅菌法で使用できます。
一方、パウチと呼ばれる紙とフィルムで構成される滅菌バッグは、過酸化水素を滅菌剤としている滅菌法には使用できません。そのため、過酸化水素滅菌を行う場合は、タイベック*2とフィルムで構成された滅菌バッグを使用します。このように医療機関では対象物の特性や滅菌法に合わせて、多様な滅菌包装資材の種類を使い分けています。
*2 Tyvek®高密度ポリエチレン不織布

滅菌処理が完了した時点から、滅菌状態を維持する期間が始まります。どのような包装資材を使用していても、保管環境は重要です。高温多湿の場所や水回り、窓際、蛍光灯下は保管場所として適しません。滅菌処理された対象物は安全保存期間(滅菌有効期限)*3が定められています。この期限の設定には、「時間」で区切る方法と「事象」に基づく方法がありますが、国内の多くの医療機関では時間での期限設定を採用しています。
*3 時間管理:TRSM(Time Related Sterility Maintenance)
  事象管理:ERSM(Event Related Sterility Maintenance)

医療機関における今後の滅菌課題

医療機関で滅菌プロセスに関わっているのが、CSSD部門です。この部門には滅菌業務の専門職である第1種滅菌技師*4が在籍するのが望ましいとされています。しかし現状は、すべての医療機関のCSSDに在籍していないことが課題です。また、品質保証が望まれており、滅菌に関しても確実にバリデートされているCSSDも少ないのが実情です。医療機器の滅菌は全世界で行われています。滅菌の質向上と担保のためには、品質システムの定着が最重要課題です。
*4 一般社団法人日本医療機器学会の認定資格

滅菌プロセスには、人員体制や品質管理など多くの課題が残されています。
鈴与では、医療機器の滅菌業務にも対応しており、その他洗浄、洗浄評価やバリデーション支援など、現場の課題に合わせたサポートが可能です。

洗浄・洗浄評価に関して知りたい方はこちらをご覧ください。
▶コラム:再使用可能医療機器の洗浄できていますか?洗浄方法と確実な評価指標とは

洗浄の種類については以下のコラムでも紹介しています。
▶コラム:医療機器の洗浄工程とは?主な洗浄方法や洗浄を必要とする医療機器について解説します

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