2025.05.30
- 医療機器物流
貸出用医療機器の運用と課題を解説―洗浄から在庫管理までワンストップ対応

医療機器には、医療機関が直接購入して自己所有するものと、メーカーや代理店から貸し出しを受けているものがあることをご存知でしょうか。
ここでは、貸出用医療機器の仕組みや運用方法について詳しく説明します。
医療機器の貸出とは
貸出用医療機器は、特に手術目的での使用が多く、8割以上が整形外科関連の手術器械です。その多くは人工関節や骨折治療などのインプラント植込み手術のために都度貸し出され、術後に返却される短期または長期貸出サービスを利用しています。
これらの専用器械は高価であり使用頻度も高くないため、医療機関にて直接購入することなく、医療機器メーカーなどが提供する貸出用医療機器サービスを利用することが一般的です。
このサービスにより多種多様のインプラントを使用することが可能で、一人一人の患者さまに合った治療法が選択できること、最新の器械を試用できること、毎回メーカー基準でメンテナンスされた器械を使用できることなども利点として挙げられます。こうした点により貸出用医療機器の使用は今後も需要が高まっていくと考えられます。
貸出用医療機器の運用プロセスと課題
(1) 貸出用医療機器の運用プロセス
まず、医療機関は手術日の予定に合わせて、必要なインプラントや専用手術器械の貸出をメーカーまたは代理店に依頼します。メーカーまたは代理店は必要な器械の状態を確認し準備して、手術日の予定に沿ってインプラントと合わせて医療機関に納品します。医療機関に到着した器械は、医療機関にて再度洗浄・滅菌が行われます。手術当日に使用された器械は院内で洗浄・滅菌され、ディーラーを経由してメーカーの物流センターに返却されます。返却された機器は、再度洗浄され、次回の貸出に備えてメンテナンスが行われます。 図:貸出用医療機器の運用プロセス
(2) 貸出用医療機器の課題
① 医療機関での医療機器における取り扱い・運用
専用手術器械は種類・形状・構造ともに複雑で、所有者であるメーカーにより、統一された洗浄方法、滅菌基準にて確実に処理されるべきです。
現状では医療機関によりさまざまな洗浄、滅菌方法にて手術に使用されていますが、特に器械の洗浄に関してはその施設により処理能力は大きく違い、器械が医療機関に納品されてから手術にて使用されるまでの時間的余裕が十分にあるとも限りません。メーカー側で、貸出用医療機器が返却されたときに実施する洗浄およびメンテナンスを確実に行い、医療機関に納入される時には医療機器の機能が維持され、患者さまへの安全が確保された状態であることが求められます。
➁ 医療機器の在庫管理
専用手術器械は高価なものもあり、メーカーさまや代理店さまにて潤沢に在庫を保有されているケースが少ないと言われています。
また、医療機関においても長期で貸出用医療機器を保管している場合、有効期限管理が必要となり、中には期限が切れて在庫の入れ替えが発生してしまうケースも見られます。
③ 必要な医療機器の確保
医療機関からのオーダーが手術日間近となってしまい、翌日の午前中に納品してほしいというケースも多く発生しています。そのため、貸出用医療機器は返却後すぐに次の出荷準備を進める必要があり、必要な専用手術器械を確保するためにもリードタイムの短縮が課題と言われています。
貸出用医療機器の洗浄・メンテナンス
続いて、メーカーの物流センターで行う一般的な洗浄方法について解説します。一般的に超音波洗浄機やWD (ウォッシャーディスインフェクター)などの機械を使用し、効率的に微細な汚れを取り除きます。器械の形状によってはブラシやスポンジを用いて手作業で目視できる範囲の汚れを物理的に除去することで、機械洗浄では取り除けない部分の汚れを徹底的に洗浄します。この場合、事前に洗浄液に器械を浸漬し、一定時間放置することで血液や体液などの汚れを分解・除去しやすくします。この順序で洗浄を行うことで、徹底的に汚れを除去し、医療機器の清潔度を高めることができます。
洗浄後、乾燥機や扇風機を用いて器械を乾燥させます。最後に器械が乾燥していて、損傷がなく、衛生状態と機能性に問題がないことを確認します。各機器の基準に沿ったメンテナンスを実施し、必要に応じて部品の交換を行います。
鈴与の貸出用医療機器物流サービス
鈴与では、平和島メディカルセンター(東京都大田区)と尼崎メディカルセンター(兵庫県尼崎市)にてメーカーさまの医療機器のローナー業務を受託しています。医療機関から返却された器械の超音波洗浄とメンテナンスを行います。センター内に洗浄設備を併設しているため、返却~洗浄・メンテナンス~在庫管理までワンストップで対応し、在庫管理における手間の削減、横持ちコスト・時間の削減、返却されてから再度出荷するまでのリードタイム短縮を実現いたします。
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*貸出用医療機器対応拠点については順次、拡大を予定しています。
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医療機器の洗浄については以下コラムで詳しくご説明しています。
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▶コラム:物流BCP対策ーBCP対策としての物流アウトソーシングと複数拠点化
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