2024.11.11

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【関西物流展 特別セミナー前編】2024年問題、何をしてきた?何をしていく? ~なぜ荷主と物流会社が協力していかなくてはならないのか~

登壇者の画像.JPG

2024年に開催された関西物流展の特別セミナー「荷主と物流会社で話す2024年対策の活用事例 2024年までにそれぞれ何をやりましたか?」に、サンスターグループ・ロジスティクス研究室室長、神戸大学客員教授荒木様*、鈴与カーゴネット株式会社川口相談役が登壇しました。
*2024年4月時点。現在はLogistics研究所ARAKI代表、神戸大学大学院フェロ。

「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」を企業理念に掲げ、中核事業である健康・生活関連の日用雑貨において、業界の物流高度化を推し進めてきたサンスターグループ。そして、国内輸送の専門会社として、北海道は釧路から九州は宮崎まで、44の拠点と1,200台の車両を持ち、海上輸送や中継輸送にも力を入れている鈴与カーゴネット。
当日は2社により、荷主側、物流会社側それぞれの視点から2024年問題、さらには2030年に予想される輸送能力の激減への対策を具体事例を交えながら紹介しました。
今回は特別セミナーの講演内容を前編・後編に分けてお届けします。本コラムは前編です。
後編はこちら

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f280ad3d3511fd8e35e0bbbb4e81cfa8_1.png荒木協和 サンスターグループ・ロジスティクス研究室室長、神戸大学客員教授*

 川口氏の写真.png 川口博  鈴与カーゴネット株式会社 相談役  
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*2024年4月時点。現在はLogistics研究所ARAKI代表、神戸大学大学院フェロ。

「2030年までに34%運べなくなる」は2段階ある

荒木室長(以下、荒木)
荒木氏写真.pngこのままだと2030年には34%の荷物が運べなくなると言われています。そうならないようするためにどのような準備を荷主として行ってきたかということと、物流会社としてどのような準備をしてきたのか、また、その間に矛盾がなかったかということを本日は検証していきます。
まだ2024年になったばかりですので、結果の検証はできませんが、現状取り組んでいることをご紹介していこうと思います。
この2024年問題や30年問題は、企業が単体で解決できるものではありません。そのため本日は、サンスターとして、と言うよりも、日用雑貨業界として取り組んでいることをご紹介しようと思います。



「2030年までに34%運べなくなる」というのは2段階になっていると考えています。まず2024年に時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用されます。こうした時間の規制で14%ぐらいが運べなくなると言われています。
次にドライバーの減少です。この理由は2つあり、ひとつは労働環境がよくないということ、そのためドライバーの求人に人が集まりづらくなっています。もうひとつは、日本の人口自体が減少傾向ですので、それに合わせて労働人口自体も減っていきます。これによって残りの20%が運べなくなると言われており、合計で34%になります。
そこで、私たちとしては、まず第1段階目、既存のサービスのままでいくと34%の減少なので、まずサービスレベルを下げましょうと言っています。それによって10%ぐらいは還元できると考えています。
次に運行効率を上げる。これは後ほど詳しくご説明いたしますが、2022年に国交省が公表している「自動車輸送統計年報」では商業トラックの積載率が40%と記載されています。これを少しでも上げることで使用台数を減らすことができると考えています。
具体的には積載率や回転率を上げる。そのために、検品をなくすなどをして、作業量、作業時間を削減し、待機時間も減らす。またモーダルシフトを使うなど、いろいろな方法があると思います。
これらを複合して行い、減らしていく。それでも還元できる限度は14%ぐらいだと思います。大まかな計算ではありますが、そのくらいだと考えています。それでトータル24%ですね。
そこにプラス、ドライバーの環境改善をする。収入を上げたり、労働時間を短くしたりするなどで、ドライバーの減少を食い止め、かつ効率化により今よりも少ない台数で運行できるようにすることで、残りの10%分を相殺できないかと考えています。
ドライバーの環境改善のために、具体的にこうした6つのことをしてきました。

ドライバーの環境改善のための6つの活動.png

ドライバーの走行時間を短くし、納品時間のリードタイムを延長しました。これはサービスレベルを下げるということですね。また波動を少なくし、納品時の作業量も減らします。こうしたことで回転率、実車率が上がります。それでも足りない分は運賃を上げるという、この6段階で考えています。これを物流会社だけではなく、また発荷主だけでもなくて、着荷主も含めて進めてきました。やはり、着荷主側の事情で納品状態は変わってきますので、そこも含めてやっていこうということを心がけてきたわけです。
今日はその内容を具体的に紹介します。特にドライバーの増員、過剰サービスを下げることによる運行効率の上昇、この点について実施してきたことを荷主側としてご紹介させていただきます。
これに対して、物流会社がやってこられたこともお話していただこうと思います。

車を増やし、中継輸送を増やし、ドライバーも増やす

川口相談役(以下、川口)
川口氏写真.pngここ2年間、続けてグリーン物流パートナーシップ会議で、国土交通大臣賞をいただきました。色々なメーカー、あるいは同業者と一緒になり、中継輸送、それから他社貨物との混載、モーダルシフト、DXなどを進めていったことが評価されました。また、ドライバーの生産性を上げてドライバー不足を解消すると、必然的にCO2の削減にもつながっていきます。こうしたテーマで受賞することができました。ここからが本題です。全国の事業用のトラック台数は720万台から600万台まで減少しています。しかし、私どもの会社は安定輸送を目的に10年間で450台の増車をしました。特に、ここ3年間では174台、大型とトレーラーの増車をしました。また、当社は1,500台ほどのトレーラーシャーシを保有しています。その中の一部は海上コンテナのシャーシですのでウイングシャーシとしては1,400台になります。労働時間が短くなると一人のドライバーの働く時間も減少します。その対策として3年ほどかけて進めていきました。

次は中継輸送です。私ども実は15年ほど前から中継輸送をやっていまして、現在、東北から関西まで年間3万8,000台ほどの中継輸送の実績があります。中継ポイントの数ですが、北は仙台から、今、南は小牧までなんですが、将来的には関西にも中継ポイントを持つ予定になっております。そうすると、さらに運送エリアが広がっていきます。
特に私どもの地元の静岡県というのが、関東~中京、関東~関西といった一番荷量が多いルートの中間地点にあります。そのため静岡県だけでも、全部で8カ所の中継ポイントを持っております。 
中継輸送を始めた当時、西回りと東回りの距離が違うと、片側だけドライバーの労働時間が増えてしまうことがありました。そうしたことの対策として、中継ポイントを増やしていったという経緯があります。これによって、関東発・関西着、関西発・関東着の均等なところに中継ポイントを持つことができました。これでかなりドライバーの労働時間の平準化が進んだと思っています。
もうひとつは、長距離になりますと今度はもう2か所で中継しないと届きません。今、私たちも一部、この2拠点スイッチを取り入れています。静岡県の裾野の東部と名古屋の2か所で中継することで、もっと中継輸送の幅を広げていこうと思っています。
中継輸送を私たちがスタートした時に、初めは両端から車両を出して中継ポイントに向かったんですが、渋滞などのトラブルがあった際に、どちらかの車に待機時間が出てしまいました。私たちはこのルートを外回りと呼んでいます。

中継輸送の仕組み.png

これはあまりよろしくないということで、中継ポイントに車庫を併設し、その車庫からトラックをスタートするようにしました。例えば、中継ポイントで前日届いた荷物を積み込み、関西で降ろして、また復荷を取って中継ポイントに戻り、そこでトレーラーシャーシを切り離したらそのドライバーは1日の運送が終わる。このような形にすることで、待機時間はなくなりました。こちらのルートを私たちは内回りと呼んでいます。ただ、こうした自社で完結するような形の中継輸送は限界があるだろうと考えています。そのため、私たちが今後進めていきたいのは、他社と我々で分け合って中継輸送をやっていこうということです。

次は、ドライバーの採用です。もちろん増車するとドライバーをどうしても増やさなくてはなりません。大型トラックのドライバーの平均年齢がもうすぐ50歳になると言われています。そして、平均年収はまだ500万円に届いていないとデータもあります。
私たちはここ3年間で、174台増車して、大幅な賃上げも実施しました。その結果がどうだったかと言いますと、応募者数が、賃上げする前の3倍に増えました。数で見ると400名から1,200名ほどに応募者数が増えています。さらに平均年齢が4.5歳下がりました。先ほどのお話しした通り、ドライバーの平均年齢が50歳に近づいている中で、応募者の平均年齢は43歳です。離職率も業界では11~13%とよく言われていますが、当社では4%台に収まりました。
志望動機を色々聞いてみましたが、この24年の改正による時間短縮での収入減を何とかしたいということと、やっぱり法令遵守を重視している会社がいいというのがありました。ただ、志望動機のうちの一番多かったのが中継輸送やモーダルシフトで毎日家に帰れるということだったんです。私たちは賃上げ効果がすごく影響があったと思っていたんですが、それよりも毎日家に帰れることが重視されていました。これはやはりドライバーがたくさん走っていっぱい稼ぐという職種ではなくなったのだと思います。ですから、今後こうした動きをさらに進めていきたいと思っています。

▶参考:鈴与の中継輸送(貸切輸送)サービスはこちら

海上輸送は切り札になる?

川口
次はDXというほど、大それたものではありませんが、効率化の仕組みの紹介です。やはり、これから労働時間の短縮などで、就業時間の管理がシビアになっていきます。今までは、前日までの労働時間や、拘束時間の履歴を全部デジタルタコグラフ(*2)から取り出して、エクセルに打ち込んで、翌日の配車に活かすようなことやってきました。しかし、これではドライバー数も1,000人程度まで増えている中、大変生産性が悪いわけです。そのため、クラウドサーバーに取り出したデータを全て集約して、可視化できるような仕組みを作りました。今年の6月からこれを運用する予定です。
ちょっと宣伝になりますが、実は私どものグループにTUMIX(*1)という会社があります。そこにTUMIXコンプラというシステムがございまして、これが非常にいいシステムだったので今回活用いたしました。残業時間がグラフ化できるとか、例えば本日は4月10日ですから、10日までにドライバーのAくんの走行距離、拘束時間などを見える化することができます。これが見えないと月末が大変になってしまうわけです。

そして海上輸送です。10年前、私たちは2万6,000本程度の海上輸送を行っていました。それが今期、およそ7万本まで増える予定です。10年間で230%増になっています。

私たちは北海道から九州まで海上輸送をやらせていただいておりますが、これはやはり荷主の協力がないとできませんでした。リードタイムの調整もそうですし、トレーラーシャーシの場合はどうしても輸送のロットが大きくなります。私たち物流会社だけではなかなかここまで増やすことはできなかったと思います。これは荷主側に2024年問題に対する理解がかなりあったということで、非常に感謝しております。
例えば関東から九州ですとCO2も40数%、陸送と比べて排出量の削減ができます。ドライバー不足の解消だけでなく、CO2の排出量の削減の面からも海上輸送は2024年問題の解決に貢献できると思っています。

荒木
やっぱり海ですよね。

川口
ええ、海です。全部海にはなかなかできないですが、海上輸送は非常に重要だと考えています。


▶参考:鈴与の海上輸送(フェリー輸送)サービスはこちら


(*1)鈴与グループ会社で運送業専用ソフトウェア・アプリケーションサービスの開発・販売をしている株式会社TUMIXのホームページは以下からご覧いただけます。
▶株式会社TUMIX

(*2)トラックの走行時間や速度などのデータを記録するデジタル式の運行記録計

発荷主は着荷主側の実情がわからない

川口
次は荷主交渉です。荷主交渉は2つありまして、ひとつは運賃の適正化、これはつまり値上げです。この活動を我々と取引させてもらっている全ての会社にお願いをしました。これも3年くらい前までは、話を聞いてもらうことはできても、本当に真摯に受け止めてくれているかは疑問なところがありました。ただ、ここ最近は荷主側の対応も大きく変わってきたと思います。
我々も、船会社から航送料の値上げや、協力会社からの値上げ要請も丁寧な対応をしていかなければなりません。中小企業では廃業しているところもあり、これから運送コストは更に上がって行くと考えております。
もうひとつは待機時間や付帯作業の削減です。2018年に関東の配送先3,000社の納入条件を調査しました。これはドライバーにアンケートを持たせて、どんな作業をして、どのくらい待機時間が発生しているかを調査したものです。そうするとフォークリフト作業やパレットの詰め替えは約4分の1のドライバーが行っていました。中にはラベルの貼付とかですね、ロットの入れ替を行っているドライバーもいました。

待機時間・付帯作業削減の荷主交渉.png

荒木:今も行っているのですか?

川口:これは5年前の話です。ただ、こうした実態を荒木さんもご存じないですよね?

荒木:知らないです。

川口:発荷主は本当に知る機会ありませんよね。

荒木:いや、発荷主だけじゃなくて、鈴与さんと話していても、現場の着荷主側の話は出ないですね。

川口:ここは私たちももっとしっかりしないといけないと考えています。この実態は物流会社やドライバーにしか分かりませんから、この実態をきちっと履歴をとって発信していかないといけないと考えています。

荒木:実際の業務はオンラインで注文が来て、オンラインで出荷するので、普段、直接対面しているのはドライバーと荷受けや出荷のパートの方だけということが多いわけです。
そのため、現場のことがちゃんと上に伝わってこないと、我々も問題がないと考えて、まともな改善ができなくなってしまうわけですね。

川口:ここのところは物流会社も遠慮していたところがあります。例えば5年前ですと、着荷主側に意見を言うことが、鈴与にとってマイナスにしかならないように思えました。

荒木:実は発荷主側でも物流会社が勝手に着荷主に意見を言わないように要望を出していました。

川口:発荷主にとって着荷主はほとんどお客さまですから、私たちが意見を上げても、着荷主には強く言えなかったんじゃないですか?

荒木:おっしゃる通りです。最近はそうしたことはなくなりましたが、物流会社が直接、着荷主のところに行って、ローカルルールを作ってくることは禁止していました。ただ、最初の話のように、今はもう3者で話さないとダメだと感じています。

川口:ほとんどの場合、私たちの交渉先は発荷主です。発荷主側の積み込み時間や作業時間は相当改善が進んでいます。ところが着荷主側はなかなか進んでいないのが実情です。着荷主側が荷降ろしの時間を削減しても、着荷主さんにとってはメリットが少ないわけです。

荒木:私たちもメーカーですので、資材の面では着荷主の立場でもあります。確かに、注文したら商品を持ってきてくれる以上のことは考えていないかもしれません。しかし、そろそろ改善していかなければいけないと思うようになりました。

川口:本当にそう思います。ですから、これは私どもも反省しているのですが、きちっと履歴を取り数値化して発信していかないと、ここの改善はなかなか進まないと思います。この辺は、今後行政もメスを入れていくのでしょうか?

荒木:そうですね、着荷主に対しては増えていくと思います。

川口:荒木さんがお詳しいと思いますが、これから発荷主だけではなく、着荷主に対しても指導を要請していくことは進んでいくと言うことですね。

荒木:はい。

以上が前編の内容になります。
最後に講演内でご紹介した鈴与の各サービスの関連資料をご紹介します。
資料は無料でダウンロードできますのでぜひお手元に保存し、輸送の見直しや今後の対策のご参考にしてください。
コラムでは導入事例も複数ご紹介しており、より具体的に各サービスの導入イメージや効果をお持ちいただける内容になっています。
〇フェリー輸送サービス
▶資料:フェリー輸送サービス紹介資料
▶フェリー輸送コラム サービスの特徴や対応航路もご紹介しています

〇中継輸送サービス
▶資料:貸切輸送サービス紹介資料
▶中継輸送コラム 中継輸送の仕組みや事例もご紹介しています

今回の講演内容や鈴与の国内輸送サービスに関するご質問、ご相談がある方はお問い合わせフォームよりお問い合わせください。



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