2026.03.12

  • 医療機器物流

医療機器の輸送・保管リスクと対策|設計・開発で見落としがちな物流リスクとは?

医療機器物流倉庫と梱包された商品

医療機器の設計・開発においては、リスクマネジメントの重要性が広く認識されています。 鈴与においても、リスクベースドアプローチに基づき、製品実現の全工程でのリスク管理を重視しています。 しかし、メーカーさまにおいては、設計や製造プロセスに比べ、物流プロセスに内在するリスクについては十分にイメージできていないケースも少なくありません。
本コラムでは、医療機器物流に潜むリスクを分かりやすく整理し、設計開発段階でどこまで考慮すべきかを解説します。

医療機器物流の全体像

「物流」と一括して捉えがちですが、医療機器の場合、その範囲は非常に広く多岐にわたります。

【海外製医療機器の物流プロセス】
・海外製造所から港や空港への製品の輸送とハンドリング
・海上輸送、航空輸送
・通関
・コンテナからの荷物取出し作業
・販売業エリアへの輸送

【国内医療機器の物流プロセス】
・製造所から販売業エリアへの輸送(短距離または長距離)

【共通する物流プロセス】
・製造業エリアからの出荷
・販売業エリアへの入荷、保管、出荷
・物流センターでの入荷、保管、出荷
・医療機器ディーラーの荷扱い、保管
・医療機関への納品と医療機関での保管状況

上記に加え、医療業界ならではの商流(SPD*の介在有無など)といったモノの流れをイメージできなければ、適切なリスクアセスメントがスタートできません。
* SPD(Supply Processing and Distribution):医療材料消耗品を一括管理する仕組みです。適切な在庫管理により、期限切れや過剰在庫を防ぎ、物品の流れを円滑にします。

医療機器物流におけるリスクマネジメント

ごくまれに「製品標準書」にて、製品を入荷する、製品を保管する、など端的に記載されていることがあります。製品開発時にリスクマネジメントを十分に実施した結果であればよいのですが、リスクが内在している可能性があります。「保管」を一例として挙げてみます。
グローバル基準では、PIC/S GMPの要求事項により室温は、15~25℃と定められています。一方、国内では日本薬局方により、室温は1~30℃と規定されています。国内の医療機器の物流倉庫でPIC/S対応の倉庫はほとんどなく、室温管理といってもグローバルの要求事項とはギャップが生じます。また、今まで保管温度条件を遵守し管理していても、昨今の猛暑から夏季の倉庫内の温度も上昇しています。そのため、リスクへの対応として保管場所の温度マッピングを実施し、保管場所の変更(屋根に近い棚には製品を保管しないなど)を行う製造販売業者さまもいらっしゃいます。

鈴与では医療機器製造用の設備輸送、医療機器DCの運営、医療機器の製造などメーカー物流に対応しています。また、グループ会社に医療機器ディーラーもあることから流通の現場、さらに再製造単回使用医療機器の製造にも取り組んでいますので、医療機関内での医療機器の導線まで把握しています。製品開発や物流でお悩みのことがありましたら、ご相談ください。

医療機器輸送・保管試験について

医療機器の輸送・保管において、医療機器を保護する役割を担うのが包装となります。JIS Z 0200 包装貨物-性能試験方法一般通則や、ASTMシリーズを参考にされる方もいらっしゃると思います。
ここでは、「どこまで具体的に物流過程をイメージできるか(ハザードの洗い出し)」が重要です。ハザードを想定した試験方法は多々ありますが、想定されるすべての試験を実施すると、開発費は過大になりますが、物流ハザードを具体化することで、既存データの流用や試験の最適化が可能になります。

●試験項目及び対応する試験方法

物流における基本要素 試験項目 ハザードの種類
輸送 一般輸送におけるランダム振動試験 一般輸送における垂直振動
一般輸送における正弦波振動試験
悪路輸送におけるランダム振動試験 悪路輸送による繰返しの衝撃
悪路輸送における正弦波振動試験
固定低振動数試験
積重ね振動試験 輸送中の積重ねストレス
低圧試験 低圧
荷役

自由落下試験

等価落下試験

主に人的荷役による落下衝撃
片支持落下試験 機械荷役による落下衝撃
水平衝撃試験 荷役又は輸送中の水平衝撃
転倒試験 荷役中の転倒
転がし試験 転がしによる粗い荷役
保管 圧縮試験 倉庫における積重ね圧縮
気象 温湿度環境試験 高温
高温/高湿
低温
散水試験


製品の物流・流通過程が明確でない場合は、JIS Z 0200 付属書JAを参考に、物流工程を細分化して書き出すことが有効です。
・落下が発生する可能性の高い荷役の高さ
・輸送形態(輸送方法、パレタイズ/バラ積み)、輸送距離、積み替え有無、道路の状況、輸送時間
・保管の期間(メーカー在庫、ディーラー在庫、医療機関在庫)
・保管条件(温度、湿度、積み重ね、マテハンなど)
これらを具体的な数値として整理することで、試験条件の選択や決定につながります。
以下に参考にしていただきたい考え方やスペックを記載します。

【荷役】物流過程における物資の積み降ろし、運搬、積み付け、入出庫、ピッキング、仕分け、荷揃えなどの作業およびこれに付随する作業

【保管環境】

環境 温度 常温、一定範囲(上限、下限) 温度逸脱
湿度 常温、一定範囲(上限、下限) コントロールは難しい。包装で担保
圧力 大気圧、差圧(陽圧/陰圧) hpa
照明 全体照明、局所照明、遮光 Lux 遮光要否
空気清浄機 通常成り行き
防音 db 作業環境に影響
振動 防振の要否 フォークリフトで震度3に相当する場合あり
作業員の力量 保管エリアの人の動線
防虫防鼠 モニタリングは必須


【衝撃】
・海上コンテナを輸送するシャーシは、一般的にリーフサスという板バネ式となり、製造所から港まで悪路が多い場合 をワーストケースとして考える
・パレタイズ化するか、バラ積みするかによって海上コンテナやトラック積載時の輸送箱のダメージは変わる
・国内輸送ではエアサスペンション装備のトラックが多いので輸送中のダメージは考えにくいが、急ブレーキがあった場合、ダメージが発生することがある

【高さ】
・ハンドリフト/フォークリフト:パレットを約15㎝あげて移動
・トラックに積めない荷物の高さにはしない

種類 ボディタイプ 荷台地上高 積載可能な荷物高
小型トラック 高床 1,000mm前後 2,800mm未満
低床 880mm前後 2,900mm未満
中型トラック 高床 1,000mm前後 2,800mm未満
低床 850mm前後 2,950mm未満
超低床 750mm前後 3,000mm未満
大型トラック 高床 1,400mm前後 2,400mm未満
低床 950mm前後 2,850mm未満
超低床 850mm前後 2,950mm未満


・パレット規格
標準寸法 長さ1,100mm 幅1,100mm 厚さ144mm 積付け高さ1,500mm

【温度】輸送中の極端な温度や高湿度へのばく露
・夏季のトラック荷台では、50℃以上にもなることがある
・寒冷地では温調車でなければマイナス温度帯になる
・空港では航空機への搭載前に航空機のそばに空輸荷物が大きな箱やパレットにまとめられ3時間以上とどめ置かれる。気候条件により、高温/低温になることがある。
・低温下での樹脂材料への影響が懸念される

まとめ

QMS省令 「第52条 製品の保持」の逐条解説(52-2)でも、製品の適合性を保持する上で、特に留意すべき事項としては、輸送時等において受ける衝撃、腐食、温度変化、静電気放出等による損害、劣化、汚染等からの保護が挙げられることと記載されています。要求事項をクリアするため、ハザードを具体的な数値にまで落とし込み、検証およびバリデーション計画を作成してください。どのようなケースがワーストケースとなるか、その理由を明確にして対策を講じましょう。
鈴与では、医療機器の薬事申請代行から製造・物流までワンストップでご支援が可能です。ご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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