2026.07.31

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医療機器の品質管理で重要な考え方「不確かさ」について解説

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私たちは日々、さまざまな数字に囲まれて生活しています。気温、売上予測、検査結果、アンケート結果など、あらゆる場面で数値が用いられています。特に医療機器分野では、測定値のわずかな違いが品質や安全性に大きく影響するため、「その数値がどこまで信頼できるのか」を適切に評価することが重要です。
本コラムで解説する「不確かさ」とは、数値がどの程度まで信用できるのかを、定量的に示すための指標です。「不確かさ」の理解と管理は、医療機器の試験所や校正機関において、測定や分析の精度を支える土台となっています。
「不確かさ」の基本的な考え方について、身近な例を交えながら分かりやすく解説します。

測定値にズレが生じる理由

「不確かさ」を考える前に、まず「誤差」について整理しておきましょう。
例えば、机の幅をメジャーで測った際に、120cmであったとします。この120cmは測定値です。しかし実際には
・メジャーのたわみ
・目盛りの読み取り方
・測定者の癖
などによって、測定結果には必ず多少のズレが生じます。このズレを、誤差と呼びます。
誤差とは、理論上は測定値と、机の幅の本当の値(真の値)との差と定義されます。 式に表すと、「誤差 = 測定値 - 真の値」となります。
これは日常的な測定だけでなく、医療機器の品質試験や品質管理においても同様です。測定機器の精度や測定環境によって、測定結果にわずかな差が生じることがあります。

真の値とは|正確に求められない理由と考え方

前述の式を見ると、誤差を知るためには、机の幅の真の値が分かれば良いように思えます。
しかし実際には、この真の値を正確に知ることはできません。
日本工業規格のJIS Z 8103(計測用語)でも「真の値(true value)」*1は理想的な概念として定義されています。
*1「真の値(true value)」:
ある特定の量の定義と合致する値。特別な場合を除き、観念的な値で、実際には求められない。(「JIS Z 8103:2019 計測用語」より)

真の値が分からない以上、誤差を正確に知ることはできません。医療機器の品質管理においても、測定値を完全に誤差ゼロで取得することは現実的には困難であり、一定のばらつきを考慮した管理が必要になります。では、私たちは測定結果とどう向き合えばよいのでしょうか。
そこで登場するのが、「不確かさ」という考え方です。これは、分からない誤差を含めて、真の値がありそうな範囲を信頼度とともに示す考え方です。

「不確かさ」とは|測定結果の信頼性を示す考え方

「不確かさ」とは、「真の値がどの範囲に存在すると考えられるか」を、確率とともに示す考え方です。
例えば、机の幅の測定結果が次のように示されたとします。

項目 結果
測定値 120㎝
「不確かさ」 ±1㎝
信頼度 95%


この結果は、
「机の本当の幅は、119cm〜121cmの範囲に95%の確率で含まれていると考えられる」 という意味になります。「不確かさ」とは、医療機器を含むさまざまな測定結果が、どの程度信頼できるか」を示す指標なのです。
医療機器分野では、測定結果の信頼性が品質保証や安全性の判断につながるため、「不確かさ」の管理が重要になります。

信頼度とは|95%が標準的に用いられる理由

「不確かさ」を理解する上で、重要なのが「信頼度(confidence level)」です。
信頼度とは、「示された範囲の中に真の値が含まれていると期待できる割合」を表します。
例えば、信頼度95%の場合は、同じ測定を繰り返したとき、100回中95回程度はその範囲に真の値が含まれると期待できる、という意味です。一方で、残りの5回は範囲から外れる可能性があります。
つまり、測定結果は絶対的と断定できるものではなく、統計的に評価されているのです。 信頼度は、どの程度その測定結果を信じられるかを示す目安とも言えます。 医療機器分野では、こうした統計的な考え方をもとに、品質保証や測定管理が行われています。

なぜ信頼度95%がよく使われるのかを、解説します。一般的に、信頼度を高く設定するほど、「不確かさ」の範囲は広くなります。
先ほどの机の場合、
・信頼度95% → ±1cm
・信頼度99% → ±20cm
のように、より高い信頼度を求めるほど、「真の値が含まれる範囲」を広く見積もる必要があります。
しかし、「不確かさ」の範囲が広くなると、実務上は使いにくい結果になる場合があります。逆に、信頼度が低すぎると、測定結果が真の値から外れる可能性が高まり、品質判断の信頼性が低下します。

そのため、95%という水準は、
・十分な信頼性
・実用性とのバランス
この2つを両立できる基準として、科学・工学・医療・医療機器の品質管理など、さまざまな分野で標準的に用いられています。

医療機器の品質管理で「不確かさ」が重要な理由

「不確かさ」を把握する最大のメリットは、測定結果を客観的に評価できることです。測定値のみでは、その数値がどこまで信用できるのかを判断するのは困難です。
しかし、「不確かさ」が示されていた場合、
・規格値を満たしているのか
・測定結果をどこまで信用できるのか
を定量的に判断できます。

前述の例では、机の幅が119cmか121cmの違いは日常生活に大きな支障はありません。しかし、医療機器においては、わずかな差が品質や安全性に影響する可能性があります。 そのため、医療機器の製造工程や品質試験では、「測定値そのもの」だけでなく、「その測定結果がどの程度信頼できるのか」まで含めて管理する必要があります。また、医療機器業界では、品質保証体制や各種規制対応において、測定値の妥当性を求められるケースも少なくありません。
「不確かさ」を適切に管理することは、医療機器の品質維持や安全性確保にもつながります。

まとめ

「不確かさ」について、次の3点をおさえておきましょう。
① 「不確かさ」は、誤差を推定した結果である
② 「不確かさ」は、必ず信頼度とセットで示される
③ 「不確かさ」を理解することで、より現実的な品質管理が可能になる

「不確かさ」は、単なる理論ではなく、品質管理や測定の信頼性を支える重要な考え方です。
特に医療機器分野では、製造・保管・輸送の各工程で高い品質管理が求められるため、測定値の信頼性を適切に評価することが欠かせません。
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