2025.04.18
- 医療機器物流
医療機器における滅菌とは?滅菌方法や滅菌プロセスについて解説します

医療機器の滅菌は、医療関連感染症(Healthcare-associated infection: HAI)の予防に不可欠です。アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の調査によると、米国では、入院患者の約31人に1人、老人ホーム入居者の43人に1人が、医療関連感染症に罹患しているといわれています。適切な滅菌方法を選択し、洗浄から包装、滅菌までの各ステップを徹底することで、医療関連感染症のリスクを最小限に抑えることができます。
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医療機器の滅菌とは
滅菌とは、医療機器に存在するすべての微生物を対象として死滅または除去することで無菌性を達成するプロセスです。日本薬局方では、微生物の生存する確率が 100万分の1以下になることをもって、滅菌保証の条件としています。
医療機関で使用される医療機器は、その製品を使う患者の安全性を確保して、消毒や滅菌といった衛生管理下で使用されなければなりません。当該機器を使用する時に起こり得る微生物感染のリスクを最小限にするために、微生物を限りなくゼロに近づける必要不可欠な工程が滅菌です。
医療機器では、手術器具、インプラント、注射器、カテーテル、内視鏡、人工心肺装置など、人体に直接接触し、感染リスクが高く無菌状態が求められる医療機器に対して滅菌処理が行われます。
滅菌方法の種類
医療機器で用いられる主な滅菌方法は、加熱法、照射法、ガス法の3つです。この3つの滅菌法は、薬機法および関連ガイドラインにも規定され、国際規格(ISO)および日本工業規格(JIS)があります。
(1) 加熱法:湿熱滅菌や高圧蒸気滅菌が主に用いられます。
高圧飽和水蒸気中で微生物を殺滅する方法で熱や圧力に強い素材の製品(金属製、ガラス製、ゴム製等)は加熱法が用いられます。
(2) 照射法:ガンマ線や電子線が主に用いられます。
温度上昇がなく、最終梱包状態での滅菌が可能です。ガンマ線はインプラント・注射針・手袋などの製品、電子線は不織布製品(ガウン・マスク等)に用いられます。
(3) ガス法:酸化エチレンガス(EOG)が主に用いられます。
製品の素材が滅菌中にガスを吸着するため、滅菌後、残留ガスを除去する必要があり、室内にて放置するエアレーションという工程が発生します。熱や圧力に弱い素材の製品(プラスチック類、チューブ類等)はガス法が用いられます。
製品に適した滅菌方法を選択し、医療機器が確実に無菌であることを科学的に証明するとともに、滅菌プロセスの再現性を保つために、滅菌バリデーションを実施して滅菌保証することが必要です。
滅菌の有効期限
医療機器の滅菌における有効期限とは、製品の無菌性を維持する期間を示しています。包装材料による時間軸を基本とした時間依存型無菌性維持(TRSM:time related sterility maintenance)と、運搬や保管方法など特別な衝撃や負荷がかかるまでの事象で管理するイベント依存型無菌性維持(ERSM:event related sterility maintenance)の2つの考え方があり、使用する包装材料、保管温湿度条件、棚付け保管場所などの条件に基づいて設定されます。
滅菌のプロセス
滅菌のプロセスには洗浄→包装→滅菌→保管の一連の工程があります。
滅菌を効果的に実施するために医療機器に付着した汚れや微生物を除去する「洗浄」というプロセスがあります。「洗浄」というプロセスでは、数量や製品の内腔の有無、製品の素材の比重などを考慮し、洗浄対象に合わせて適切な洗浄方法を選択する必要があります。洗浄後、乾燥させた製品の滅菌状態を維持し、物理的な損傷や汚染から保護するためには適切な包装も欠かせません。
これらの滅菌前プロセスを適切に行うことで、滅菌効果が向上し、滅菌時間の短縮にも繋がります。
医療機器の洗浄や包装について詳しく知りたい方は、以下コラムもご参考ください。▶コラム:医療機器の安全性を高める!洗浄の重要性と外部委託のポイント|消毒・滅菌との違いやバリデーションについても解説します▶コラム:医療機器の包装工程とは?滅菌を必要とする医療機器包装について解説します
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